

見えるものと
見えないものの間
超絶染色技法の世界

ごあいさつ
先天性色覚異常というハンディキャップにより美大進学を断念、また周囲の無理解から健常者とは違う色覚を揶揄される事もあり、一般人と見え方が違うという現実は、それでも美術の道へ進みたい私にとって時に耐え難い重積となりました。
しかし、不思議なことに唯一「絹布」に染料が染まる際の独特の色彩には、解き放たれたような心の高揚を感じることができ、私は筆を置くことなく歩みを進めることができたのです。
30年が経過した頃、まったく偶然に、日本が世界に誇る伝統文化の一つ「能楽」との出会いが。
異界と現世が時間軸を超越して邂逅し、物語を紡いでいく能。その、ふたつのものが交わる、あちらでもこちらでもない空間を能では「あわい」と呼ぶのですが、私と他者が明確には知覚できないであろう色彩領域もまた「あわい」ではないのか。ならば私が見えるがまま感じたままの作品にも、それを見る人の感性を喚起する力が備わっているのではないか。そう気づいた瞬間、先天性色覚異常というハンデを赦し、より自分らしく自分の見えている世界を思い切り表現してみることを決意。「あわいの染色絵師」として新章をスタートさせることにしたのです。
そうして生まれたのが6つのカテゴリーです。白いはずの月下美人を「日蝕」「月蝕」のごとく黒く染め抜いた「蝕(しょく)」、「蝕」が連なった「連(れん)」、「蝕」の前後に起こる薄墨色の状態「朧(おぼろ)」といった、さまざまなあわいの繚乱をご覧ください。
これまでの常識や価値観が揺らぎ始めている昨今です。
拙作を媒介として、見えるものと見えないもの、自分と他者、彼岸と此岸など、隔絶したように感じる二つは全て繋がっており、無窮の可能性を秘めていることを感じていただければ幸甚です。
イズオカヨシユキ


先天性色覚異常というハンデを逆手にとり、
見えるものと見えないもの、あるいは現実世界と異世界といった
境界領域「あわい」を絹の布に幻視する、異能の染色絵師。

先天的な色覚異常というハンデがあり、油彩など一般的な絵画表現には無理があったが、不思議なことに絹布に染色を施す際のみ、えもいわれぬ色彩の躍動と陰影が残像のごとく網膜に浮かび上がる。
その一瞬の気配を手掛かりに、写実を超えた異世界と現実世界の境界領域「※あわい」としてとらえ描き出す、唯一無比の染色絵画技法を獲得。時空を反転させたかのような「蝕/shoku」、花が夢幻に乱舞する「連/ren」、地平を覆うがごとく一面に咲く花「群/gun」という「3つのあわい」を精力的に展開中。
※「あわい」とは能の用語で、「媒介・あいだ」という意味。

私にとって絹の布は色彩の祭壇なのです
by イズオカ ヨシユキ
私の作品は着物等を制作する為の伝統的な染色技法・ろうけつ染めを用いて絹布に染めています。当然、油彩画や水彩画などの平面作品とは技法、表現方法が大きく異なります。
一枚の作品を仕上げるには、染料や布に関する知識、それを活かし切る繊細な技術力、忍耐力を要します。また染料と布は相性の良いポイントを探るのが非常に難しく、偶然をも味方に出来るだけの運も必要で、そこがまた面白いところでもあるのです。
色覚異常の私の見ている世界と、他者が見ているであろう世界、現在と過去、成長と衰退、正と邪、彼岸と此岸といった、相反する世界の境界領域=あわい。それらをたしかに「在る」ものとして絹の布に色彩表現できたら。そんなワクワクする思いで始めた「蝕/shoku」「連/ren」「群/gun」という「3つのあわい」を、どうぞお楽しみくださいませ。
1970 広島県広島市生まれ
1989 広島県立観音高校卒。美大受験を希望するも、色覚異常により断念
1995 マレーシア国立博物館にも作品収蔵されている世界的バティックアーティスト
MD.SALLEH BIN DAWAM氏に師事/マレーシア
1997 帰国後、独自に染色技法を開発
個展
《国内》●阪神百貨店梅田本店/大阪市 ●トキハ本店/大分市 ●米子高島屋/米子市
●山形屋/鹿児島市 ●大丸福岡天神店/福岡市 ●広島三越/広島市
●小倉井筒屋/北九州市 ●名古屋栄三越/名古屋市
《海外》●SOMArts Cultural Center/サンフランシスコ ●K gallery/釜山広域市海雲台
●マレーシア 他
《パブリックコレクション》ホテル、病院、市立美術館、ユネスコ、デパート、他多数
また、国内外のアートコレクターの個人蔵多数。
新シリーズ
「蝕」「朧」「連」「群」「彩」「夢幻」について
先天性色覚異常であるイズオカは絵を描く際、独特な手法をとる。まず対象をしっかり凝視。タイミングを見計らい真っ白な布に目を移すと対象の残像が浮かび上がる。同時に網膜では、昔のネガフィルムのように色彩の反転が発生。その「刹那の残像」が消えぬうち慎重かつ素早く下描きの筆を走らせる。こうして新しく生まれたのが6つの作品カテゴリー「蝕」「朧」「連」「群」「彩」である。
本来は白い花である月下美人を「月蝕」のごとく黒く染め抜いた「蝕(しょく)」。「蝕」の前後に起こる薄墨色の状態「朧(おぼろ)」。蝕が連なった「連(れん)」。先天性色覚異常の眼では捉えにくい赤や青をカンをたよりに大胆に染め抜いた「彩(さい)」。「蝕」や「彩」が咲き乱れる「群(ぐん)」。さらには多大なインスピレーションを得ている能楽とのコラボ「夢幻」まで、世界に類例を見ない超絶染色ワールドを展開。











